
こんにちは。社会保険労務士法人やえざき事務所です。
2026年4月1日から、「治療と就業の両立支援」が企業の努力義務となりました。
厚生労働省の資料によると、通院しながら働く人は就業者の約4割(2,326万人)。疾病を抱える従業員への対応は、もはや特別なケースではなく日常的な労務課題です。
本記事では努力義務化の背景と、企業が整えるべき環境について解説します。
なぜ「治療と就業の両立支援」が努力義務化されたのか
背景には2つの要因があります。
1. 疾病を抱える従業員の増加
医療技術の進歩により、がん等の生存率が改善し、「治療しながら働き続ける」ことが現実的な選択肢になりました。(参考:厚労省資料 P17)
2. 労働力人口の高齢化
年齢とともに罹患率が高まる疾病を抱えながら働く人は増加しています。一方で、退職した人の4人に1人は治療開始前に離職しているという実態もあります。(参考:厚労省資料 P18)
これまで厚生労働省の「ガイドライン」では企業の体制整備は任意でしたが、こうした状況を踏まえ、「治療と就業の両立支援指針」が公表され、企業の取り組みが本格的に求められることとなりました。
企業が整備すべき「5つの環境」
指針では、両立支援を進めるための5つの環境整備が示されています。
1. 基本方針の表明と周知
両立支援に取り組む方針や社内ルールを作成し、すべての従業員に周知します。支援しやすい職場風土づくりの第一歩です。
2. 研修等による意識啓発
従業員・管理職に対して、研修やセミナー、ポスター配布などで意識啓発を行います。当事者だけでなく周囲の理解が不可欠です。
3. 相談窓口の明確化
両立支援は従業員からの申出が原則です。相談窓口や情報の取扱いを明確にし、安心して申出できる体制を整えます。メンタルヘルスの相談窓口など、既存の窓口を兼ねてもOKです。
4. 制度・体制の整備
治療と就業の両立を支える休暇制度・勤務制度を検討します。
| 種類 | 制度 | 内容 |
|---|---|---|
| 休暇制度 | 時間単位の年次有給休暇 | 1時間単位で取得可能(年5日まで)。通院等に対応 |
| 傷病休暇・病気休暇 | 入院・通院のための法定外休暇 | |
| 勤務制度 | 時差出勤制度 | 始業・終業時刻を変更し通勤負担を軽減 |
| 短時間勤務制度 | 所定労働時間を短縮 | |
| 在宅勤務(テレワーク) | 通勤による身体への負担を軽減 | |
| 試し出勤制度 | 勤務時間・日数を短縮し円滑な復職を支援 |
制度を整えるだけでなく、対応手順の整理・関係者の役割分担・日頃からの周知など、実際に機能させる仕組みづくりも大切です。
5. 社内外の連携
産業保健スタッフや主治医との連携に加え、必要に応じて外部の支援も活用できます。
- 医療機関:医療ソーシャルワーカー、看護師
- 公的機関:都道府県労働局、産業保健総合支援センター
- 専門家:社会保険労務士
まとめ|まずはこの3つから
いきなりすべてを整備する必要はありません。まずはここから始めてみましょう。
- 基本方針の表明:両立支援に取り組む姿勢を社内に示す
- 相談窓口の設置:既存窓口の活用でもOK
- 制度の確認:時間単位年休や時差出勤など、自社で使える制度を洗い出す
次回は、従業員・医療機関・企業をつなぐ「両立支援コーディネーター」の活用方法について解説します。
▼シリーズ記事▼
- 第1回(本記事):努力義務化の背景と企業が整えるべき環境
- 第2回(次回公開予定):両立支援コーディネーターの活用と実践ステップ
【参考リンク】
- 治療と仕事の両立について|厚生労働省
- 治療と就業の両立支援指針(令和8年厚生労働省告示第28号)
- 事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン(令和6年3月版)
- 治療と仕事の両立支援ナビ|厚生労働省
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